令和5年度(2023年)の税制改正により、自社発行の暗号資産(仮想通貨)については、期末の時価評価の対象外に!

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令和5年度(2023年)の税制改正により、暗号資産(仮想通貨)を発行する法人の自社発行した暗号資産については、期末の時価評価から除外されることになりました。

その他にも、個人の暗号資産の分離課税や損失の繰越しなどの要望も多いですが、令和4年(2022年)12月16日に公表された税制改正大綱に盛り込まれたのは、上記の自社発行の暗号資産の時価評価のみとなっています。しかし、この部分だけの税制改正であっても、国内のブロックチェーン産業の発展にとっては、大きな意味があると言えるでしょう。

目次

法人保有の暗号資産の期末時価課税とは?

令和4年(2022年)12月に公表された「令和5年度(2023年)の税制改正」では、自社発行のトークンなどの暗号資産(仮想通貨)の期末時価評価による課税がなくなるということですが、そもそも時価評価とはどのようなものかを確認しましょう。

「期末時価評価」とは、法人が決算日において保有している暗号資産について、その日の終値によって損益を認識することです。

例えば、その暗号資産を1,000万円分購入したとします。しかし、期末の決算日においては値上がりしており、その時価が3,000万円になっていたとします。

この場合に、たとえ売却せずに保有を続けていたとしても、その差額の含み益である2,000万円に対して法人税が課税されるというものです。

法人としては、売却して日本円にしていなかったとしても、法人税がかかるのですから、大きな注意が必要だと言えます。決算日から2ヶ月以内に法人税を納める必要があるのですが、暗号資産を保有し続けて、もしも暴落してしまった場合には、納税資金自体がなくなってしまうというリスクがあるのです。

実際に、税制に詳しくない法人の経営者が安易に暗号資産を保有してしまっていて、納税額が分かったときに愕然としてしまうケースもあったのではないでしょうか。

なお、決算日において、取得時よりも価格が下がって含み損が出ている場合には、その損失額を経費計上することになります。

発表された「税制改正大綱」によると、この時価評価に関しては今後も継続するものの、その暗号資産自体を発行した法人に関しては、その暗号資産の含み益などに課税するのはやめて、損金(損失)も益金(利益)も税金の計算には絡めないこととしたのです。

自社発行の暗号資産の期末評価が除外となった理由

税制改正大綱で自社発行の暗号資産の期末時価評価が除外された理由を説明します。

日本でブロックチェーン、WEB3.0などの分野の産業が育っていくためには、期末時価評価という税制が大きな足かせとなっていました。

暗号資産を開発したい会社としても、開発して上場して価格が付いた場合に、あまりも大きな課税がなされるので、正直なところ、その法人は事業継続が難しくなるかもしれませんし、少なくとも、資金繰り的に非常に厳しくなることが考えられるのです。

時価総額100億円程度の暗号資産を開発して広めたとしても、自社保有しなければならない暗号資産に対して大きな税金がかかり、かつ、その暗号資産を売却するわけにもいかないので、キャッシュが足りなくなってしまうわけです。

そのため、実際に日本人が開発した有名な暗号資産などでも、海外を本拠地としているので、日本の会社ではないのです。税金のためかはわかりませんが、例えば、DEPなど将来性が期待される暗号資産なんかは、日本人が開発してますが、シンガポールの会社となっていますね。

日本の国益を考えた場合には、日本で会社を作ってもらった方が良いわけですから、税制改正に至ったと言えます。

自社発行ではない暗号資産は引き続き期末評価されることに注意する

「令和5年度(2023年)の税制改正」で変更されるのは、あくまでも自社で暗号資産を発行した場合の話です。

ここを勘違いすると大きな痛手を負うことになるので注意しましょう。

法人が、単に暗号資産に投資した場合で、その暗号資産がどこかの暗号資産取引所に上場している場合には、これまで通りに期末時価評価され、含み益がある場合には課税されることになります。

自社の資金がどのくらいあるかを期末に確認して、必要とあらば、暗号資産の一部を売却して、納税資金を確保するようにしましょう。

個人的には、暗号資産は値動きが激しいので、自社発行以外の暗号資産に関しても、期末時価評価されないようになって欲しいとは思っておりますが。

次回以降の税制改正大綱に、この点の改正が盛り込まれてくれればなと思っております。

「令和5年度(2023年)の税制改正」の税制改正大綱に盛り込まれなかった事項

「令和5年度(2023年)の税制改正」の税制改正大綱で、暗号資産について、下記のような点が変わるのではないかと期待した人もいらっしゃると思います

・個人の暗号資産同士の交換に関しては、損益を認識せずに課税対象としないこと
・個人の暗号資産売買に関して、分離課税にして税率を下げること
・個人の暗号資産の損失に関して、3年間の赤字の繰越(繰越控除)を認めること

個人的には、暗号資産同士の交換への課税をなくすというのは、中々ハードルが高いかなとは思いますが、これが実現すると、損益計算もしやすくなりますし、法定通貨に戻すまで課税されなくなるので、投資効率は非常に高まると思います。国としては、暗号資産からの税収が劇的に減ることになるので、改正になるとしても、大分先になるでしょうし、実現への道のりは中々険しいかと思います。

分離課税については、FXが分離課税になった経緯もあるので、今後の税制改正大綱に盛り込まれてくることも期待できるのではないかと思います。ただ、こちらも税収へのインパクトが大きいので、ハードルは低く成りでしょう。

分離課税となった場合には、3年程度の赤字(損失)の繰越についても、同じタイミングで認められるのではないかと思います。

令和5年(2023年)の暗号資産の税制改正のまとめ

令和4年12月16日に公表された「令和5年度(2023年)の税制改正」の税制改正大綱において、暗号資産(仮想通貨)関連の税制改正が盛り込まれたのは大きな一歩だと言えます。

これにより、ブロックチェーン関連企業が日本で事業を開始するという決断をしやすくなったと言えるでしょう。本音では、なぜこのような時価評価税制が続いていたのだろうかと思いますし、もっと早く税制改正がなされていれば良かったと思うところはあります。

税制は、その国の産業に大きな影響を与えますし、即決できずに不利な制度が続くと、あっという間に海外にその市場を取られてしまうものです。

暗号資産回りの税制に関しても、日本が国際競争において有利になるように、今後もプラスの改正を重ねていって欲しいなと思います。

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