NFT化したデジタルアートの購入とその後の利用について著作権の視点で徹底解説

NFT化したデジタルアートの購入とその後の利用について著作権の視点で徹底解説
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近年、「NFT」というキーワードが話題を集めています。NFTは、Non-Fungible Tokenの頭文字を取ったもので、「非代替性トークン」と訳されます。

これは、ブロックチェーン技術を用いてデジタルデータの唯一性を担保する仕組みであると説明されることがあり、数多くの企業がNFTに参入しようとしています。

本記事では、デジタルアートという切り口から、NFTと著作権との関係について解説していきたいと思います。 NFTという言葉に関してはよく聞くようになりましたし、日本の有名取引所であるコインチェックなどでは、NFTに興味を持つ投資家に対するサービスも始まっています。

今回、著作権に関して徹底解説してくれるのは、伊藤国際商標特許事務所(旧:ITODA知的財産事務所)の代表者であり、日本弁理士会著作権委員会委員長でもある弁理士の伊藤大地先生です。非常に勉強になる内容であり、NFTや仮想通貨に関わる方は、必ず一度は目を通して欲しい内容です。

これら法律関係の概要を知らずして、NFTは語れないという内容ですし、紛争の予防として役立つでしょう。

お読みいただくとわかるのですが、法律関係の固い話のはずが、とても読みやすいく、おもしろい内容となっていて、著作権とNFTの法律的関係が非常によくわかります。

日本弁理士会、著作権委員会委員長の 伊藤大地先生の写真
2021年度 日本弁理士会 著作権委員会 委員長 伊藤大地先生
タクミ

専門家である弁理士の先生によるデジタルアートなどのNFTの著作権の観点のお話は、非常に興味深いですね。

みお

所有権や著作権の概念についてなど、とても勉強になりますね。

目次

NFT、デジタルアートの所有権について

NFTが登場したことで、仮想通貨(暗号資産)で購入するデジタルアートをはじめとする「NFTの所有権を持つ」という概念が生まれましたが、法的見地から見た場合に、この所有権とはどのような性質を持っているのか、又、実際に所有していると呼ぶことができるのか、このあたりを解説します。

NFTの登場でデジタルアートが「所有」できるようになった?

デジタルデータというのは、データを劣化させることなく、容易・迅速かつ完全にコピーができるものですので、どのデータが原本なのかコピーなのかを区別することが困難でした。

しかし、このNFT技術を活用することで、デジタルデータの唯一性を担保することができるようになる結果、どのデジタルデータがオリジナル・原本なのかを特定することができるようになりました。

これは、従来は特に観念されることがなかったデジタルデータのオリジナル・原本というというものを観念できることになったという意味で、これまでの常識を覆します。NFTの登場によりデジタルデータを「所有」することができることになったと説明されることがあるのは、こうしたことによるものと言えます。

こうして、従来はリアルの世界でしか成し得なかったアートの原本(オリジナル・原作品)の売買が、デジタルアートの世界でも可能になったとという状況になっています。

しかし、デジタルデータのオリジナル・原本が特定でき、あたかもそれを売買できるかのようになっているとしても、そのデジタルデータを「所有」しているとまで言い切ることはできるのでしょうか

これから詳しく解説していきますが、結論として、現在の法律からすると、実際にデジタルデータの「所有権」が取得できることにはなっていません。

ですので、取り扱いには充分注意が必要です。では、具体的にデジタルデータの所有権について解説していきます。

所有権は有体物を対象とする権利

タクミ

所有権は有体物に対する権利だったんですね!これは大きな学びでした。

デジタルデータの所有権を取得できることにはならないということが一体どういうことかについてお伝えするにあたっては、まず「所有権」というものが一体何かというところからはじめなければなりません。

所有権というのは、物に対する権利ということでカテゴリーとしては「物権」に該当します(これに対する概念として、人に対する権利を「債権」といいます)。

そして、物権というのは、民法その他の法律に定めがない限り勝手に創り出すことはできないことになっています(民法175条。物権法定主義)。

また、所有権というのは、所有物を使用・収益・処分することができる権利として民法に定められていて(民法206条)、ここにいう「物」というのは、「有体物」を指します(民法85条)。有体物というのは、空間の一部を占めて有形的な存在をもつ物とされ、具体的には気体・液体・固体のいずれかを指すものを言います。

以上を前提に、まずはリアルアートについて考えたいと思います。

例えば絵画というのは、キャンバスに絵が描かれていて、額縁に入っていることが多いです。

そして、絵画の売買取引の時には、その額縁に入ったキャンバスを購入し、その引き渡しを受けるということになります。

つまり、リアルアートの取引では、絵の具が塗られたキャンバス(+額縁)という有体物の所有権を移転するために売買契約がされていると見ることができます。これは、普通の絵画の売買取引ですので、特に物珍しいお話は何もありません。

無体物を対象とする「デジタル所有権」というものは存在しない

みお

無体物であるデジタル資産には所有権が存在しないのはショックだわ!NFTを買った人の権利はどう守られるのかしら。

一方のデジタルアートの場合はどうでしょうか。デジタルアートというのは、モニターに映し出されている限りは、ある意味で絵画と同じように視覚的に鑑賞することができますが、その実体は「デジタルデータ」です。

デジタルデータは、形があるものではなく空間の一部を占めて有形的な存在を持ちませんので、有体物ではありません。このような形のないものを、法的には「無体物」として、有体物と区別しています。

前述のとおり、所有権というのは有体物に対する権利ですので、無体物に所有権が発生することはありません。無体物に何らかの物権的な権利を認めようとする場合、物権法定主義から、民法や他の法律で定めがある必要がありますが、「デジタル所有権」を定める法律は今のところ存在していない状況です。

そうすると、「デジタルデータを所有する」ということは、(説明上の言い回しや当事者間の取り決めはともかく)法的には観念できないことになります。

このように、リアルアートとデジタルアートとでは、所有権の有無という点でまず、違いがあるということを押さえておきましょう。

NFTの著作権に関して

ここでは、著作権の観点から、NFT化されたデジタルアートと著作権の関係に関しての考察を論じます。

将来的にNFTの購入や投資を行いたいと考えている方は、必ず目を通して欲しいところです。

著作権は無体物を保護する権利?

タクミ

なるほど、著作権は形のないものに対する権利なんですね。

みお

所有権と著作権の違いを知ることができて良かったわ!

次に本題の著作権です。著作権という言葉もよく見聞きするかと思いますが、ここでおさらいをしておきましょう。

著作権というのは、一言で言うと、著作物の利用をコントロールすることができる権利であると言えます。

著作物というのは、思想や感情を創作的に表現したもので、文芸・学術・美術又は音楽の分野に属するもので(著作権法1条)、形のないものです。

絵画や写真、あるいはCDやDVDといった形あるものを通じて見たり聞いたりすることができる場合がありますが、著作物それ自体は無体物になります。

著作権は、著作物を生み出した時に何の手続きも必要としないで自動的に発生するもので(著作権法17条)、複製権、公衆送信権、展示権、譲渡権などといった複数の権利が束になったものです(著作権のほか、著作者人格権も自動的に発生しますが、本稿では割愛します)。

そして、これらの複製権、公衆送信権、展示権、譲渡権などといった個々の権利のことを支分権あるいは著作財産権と呼んでいて、文字通り、それぞれ複製とか、公衆送信とか、展示、譲渡といった著作物の利用行為ごとに権利が定められています。

著作権があることで、無体物である著作物の無断利用を予防したり中止させたり、あるいは対価を取って使わせたりすることができるようになりますので、著作権というのは著作物の利用をコントロールすることができる権利だというお話になってきます。

言い換えれば、著作権は、著作物という無体物を利用という側面から保護をしようとする権利であると言えるでしょう。

著作権はデジタル所有権とは言えないの?

さて、こうした著作権ですが、絵画なり写真なり、思想・感情を創作的に表現したものを保護するものですが、所有権と競合することはないのでしょうか。

例えば絵画を例にして考えてみますと、ご自身が所有するキャンバスに、同様にご自身が所有する絵の具で絵を描いたとします。この場合、キャンバスや絵の具の所有権はご自身が元から持っていることになります。そして、これらを使って絵を描きますと、思想や感情を創作的に表現した絵画がキャンバス上に表れることになりますので、その時点で絵画の著作物についての著作権を取得することになります。

つまり、所有権と著作権は別個独立に成立するということになります。

ちなみに、この例ではご自身が所有するキャンバスや絵の具を使った前提でお伝えをしていますが、ご自身が所有していない物を使ったとしても、著作権は問題なく発生します。

例えば、他人が所有する建物の外壁に無断で絵を描いたとしても、器物損壊の問題は別として、著作権はその絵を描いた人に発生します

さて、ここでデジタルアートに意識を向けてみますと、PCやMacなどの電子機器を用いてデジタルアートを作るとき、多くは自らが所有する電子機器を用いると思われますが、その創作活動の成果であるデジタルアートは、思想や感情を創作的に表現したものであれば著作物として著作権が発生します(他人が所有する電子機器を使っても、デジタルアートを創作した人に著作権が発生するのが原則です)。

そうすると、電子機器をキャンバスと捉え、デジタルアートを絵の具で描いた絵画と捉えれば、リアルアートとデジタルアートは統一的に把握ができるのではないかとも思えてきそうです。

しかし、デジタルアートは、電子機器上に表現されたものであったとしても、デジタルデータであるがゆえに容易にコピーをしてどこかに送ることができますし、必ずしも創作活動をした電子機器上でしか見ることができないものでもありません。

キャンバスに描かれた絵画というのは完全にコピーすることが容易でない点だけを捉えても、そのキャンバス上にしか存在しないものであるリアルアートとは大きく異なっているというのがご想像頂けるのではないでしょうか。

このように、リアルアートとデジタルアートとでは、性質の違いから取り扱いに差が出てきてしまいますので、両者を統一的に把握するというのは、現在の法律では難しいということになります。

正直なところ、現在の法律では昨今話題となっているようなNFT化されたデジタルアートの流通形態まで想定されておらず、実態に追いついていないというのは否定し難いところです。しかし、追いついていないからといってデジタルアートの流通の場面で著作権法を無視することはできません。

このため、デジタルアートを取り扱うには、現在の著作権法に照らして注意点を確認しておくということが大切になってきます。

リアルアートの所有権が移ったら著作権はどうなる?

では次に、デジタルアートの流通の場面における著作権法上の注意点はどういったところか、ということになるのですが、デジタルアートのお話に入る前に、比較対象として、まずはリアルアートの流通というところから見ていきたいと思います。

前述の例と同じように、キャンバスに描かれた絵画を題材に考えてみましょう。

絵画が欲しいという場合、その「絵画が欲しい」ということの意味するところについて、特になんの疑問も抱くことなく画家(あるいはバイヤー)と、その絵画の売買契約を結ぶのが通常のことだと思われます。

これを法的に見ると、通常は有体物である絵が描かれたキャンバスの所有権を取得する、という内容の契約になります。

つまり、絵画を購入すると、その有体物としての絵画の所有権を取得する、ということになります。

一方、著作権はどうなるかというと、所有権の移転に伴って著作権まで一緒に移転するということにはなりません。

著作権者は、自らが保有する著作権を、契約などを通じて他人に譲渡することができます(著作権法61条1項)。譲渡するのは、著作権の全部でも一部でもよく(著作権法61条1項)、契約書がなくても構いません(トラブルになったときに備える意味では書面化することが望ましい)。しかし、著作権を取得するつもりであれば、著作権の売買をしているということを明らかにしておくことが必要です。

このため、絵画の著作権を譲り受けることが契約内容になければ、絵画の所有権を譲り受けようとも、所有権の移転とは全く連動せず、絵画の著作権はそのまま画家(著作者)のもとに残り続けるということになります。

「絵画が欲しい」ということの意味するところというのは、通常、物体としての絵画それ自体が欲しいということであって、絵画の著作権を欲しがっている訳ではないでしょうから、現実問題としては、所有権と著作権は別の制度だから連動しないのだと理解しておいて宜しいかと思います。

購入したリアルアートの使い方には制限がある?

ところで、先に、所有権というのは所有物の使用・収益・処分をすることができる権利だとお伝えをし、一方の著作権というのは著作物の利用をコントロールできる権利だとお伝えをしていました。

では、自分で購入した絵画であれば、どこでどう使おうとも自由なのでしょうか。実は必ずしもそうとは限らず、ポイントは、「著作物の利用に該当するかどうか」です。

絵画を自宅に飾って鑑賞するというのは、著作物を享受する行為に過ぎませんので、著作物の「使用」であって「利用」とは区別されます。

「使用」の典型例である絵画を鑑賞したり本を読んだり、あるいは音楽を聴いたりするのと同じで、その「使用」に対して著作権が及ぶものではありません。

では、その絵画を使って展示会を開くというのはどうでしょうか。特定少数の友人に観せる程度であれば特に気にすることはありませんが、その絵画のオリジナル・原作品を、不特定の人や特定多数の人に直接観せられるように展示(以下「公に展示」と言います。)する場合、支分権の一つである展示権が問題になってきます(著作権法25条)。

しかし、この展示権は、その絵画のオリジナル・原作品の所有者又はその同意を得た者であれば、著作権者の同意を得ることなく、その絵画のオリジナル・原作品を公に展示することが認められています(著作権法45条1項)。

これは、所有者の便宜を図ったものと理解されています。但し、このルールは、美術の著作物の原作品を街路、公園その他一般公衆に開放されている屋外の場所又は建造物の外壁その他一般公衆の見やすい屋外の場所に恒常的に設置する場合には、適用しないとされていますので、設置場所がどこでもいいわけではない点、注意が必要です(著作権法45条2項)。

このほか、その絵画のオリジナル・原作品を公に展示するにあたって、観覧者のためにこれらの展示する著作物の解説・紹介をすることを目的とする小冊子に当該展示著作物を掲載するとか、その必要と認められる限度において、当該展示著作物を上映したり自動公衆送信を行ったりするとかいった行為も、著作権者の許諾なく行うことができることとされています(著作権法47条1項・2項)。

他方で、自らが所有している絵画をインターネットに公開するという場合、公衆送信権が関わってきます(著作権法23条1項)。

絵画のオリジナル・原作品の所有者が著作権者の許諾なく公衆送信を行うことができる場合というのは、その絵画を引用して行う場合(著作権法32条)や、その絵画のオリジナル・原作品を自ら公に展示する際に解説・紹介をする場合(前掲・著作権法47条2項)、展示著作物の所在に関する情報を公衆に提供するためにする場合(著作権法47条3項)、更には自らが所有するその絵画のオリジナル・原作品を譲渡・貸与したいと申し出ようとする場合(著作権法47条の2)など、限定的に列挙されています。

単に絵画を購入したということを示すために写真にとってSNSやブログに掲載することは、基本的には公衆送信権を侵害することになってしまいますので注意が必要です

また、自らが所有している絵画をポストカードやTシャツなどにして販売しようというような場合には、複製権と譲渡権(インターネット販売の場合には公衆送信権)が問題になってきます(著作権法21条・26条の2)。著作権者に無断で商品化して広く販売すると、著作権侵害となってしまうので注意が必要です。

このように、たとえ自らが絵画の「所有権」を持っていたとしても、著作物の享受を超えて利用しようという場合には、様々な観点から著作権(支分権)が問題になってきます。

しかし、それが著作権者の許諾を要するのか否かが事細かに著作権法に定められており、絵画のオリジナル・原作品の所有者が著作権者の許諾を得なくとも自由に行える行為ということも明記されているので、リアルアートに関しては、所有者と著作権者のバランスに配慮がされて制度設計されていると見ることができます。

デジタルアートの著作権法での取り扱いはどうなっている?

今度はデジタルアートの場合を考えてみます。「デジタル所有権」なるものは法律に定めがないので、デジタルアートを購入したといっても、デジタルアートに所有権が観念できない以上は、「所有権」を取得することはできません

せいぜい、デジタルアートを創作した人(あるいはそれをNFT化した人)から、当該デジタルアートへの独占的なアクセス権限を付与された程度とみるのが妥当でしょう。言い換えれば、当事者間の債権的な契約を締結したに過ぎないとも捉えられます。

また、デジタルアートを購入したからといって、このことと連動して何の断りもなしにデジタルアートの著作権まで購入することにはならないのは、リアルアートの売買の場合と同じです。結局、デジタルアートを購入しただけでは、所有権も著作権も取得したことにはならない、ということになります

したがって、NFT化されたことによって唯一性が担保されたデジタルアートであっても、そのデジタルアートに対して何か法律に基づいて設定される客観的な権利が手に入るというものではなく、法的には、あくまでもデジタルアートを創作した人(あるいはそれをNFT化した人)から当該デジタルアートへの独占的なアクセス権限が得られるに過ぎないのだ、ということになります。

このため、購入したとされるデジタルアートの利用の場面では、リアルアートでその所有者に認められるような展示の場合などに認められる特例が適用されないため、当事者間で何らの取り決めもしておかないことには、著作権法に照らして問題となることが様々に出てきます。以下、この点について掘り下げていきたいと思います。

デジタルアートを利用する場面を想定してみる

典型的な例としては、NFT化されたデジタルアートをSNSやブログに掲載するという例を考えてみましょう。リアルアートのお話でもお伝えをしたことと同じように、デジタルアートを購入したからといって、それを著作権者に無断でSNSやブログに掲載すると、当該デジタルアートの公衆送信権を侵害することになります(著作権法23条)

また、デジタルアートを使ってインターネット上で展示会を開こうという場合はどうでしょうか。デジタルアートのオリジナル・原作品の(法的にはともかく)所有者だから、公に展示をしても展示権を侵害しないのでしょうか。

これは、名目は展示会と謳ってはいるものの、その実態は、法的には公衆送信をしているに過ぎないと評価されることになると考えられます。つまり、この場合は展示権が働くことはないのですが、公衆送信権を侵害することになるということです。

それでは、展示会をリアル開催した場合はどうでしょうか。NFT化したデジタルアートのオリジナル・原作品を、展示室でモニターなりに表示する場合、これは展示権が働く可能性があると考えられます(著作権法25条)。しかし、前述のとおり、デジタルアートの所有というものが観念できないことから、「所有者」による展示ということにはなりませんので、著作権者の許諾なく行うことは難しいものと考えられます。

今度は、NFT化したデジタルアートをコピーして商品を作るというのは問題ないでしょうか。これはリアルアートの場合と同様に、複製権と譲渡権(インターネット販売の場合には公衆送信権)が問題になってきます(著作権法21条・26条の2)。著作権者に無断で商品化して広く販売すると、著作権侵害となってしまうので注意が必要です。

更に、そのNFT化したデジタルアートを他人に貸すような場合はどうでしょうか。不特定の人か特定多数の人にNFT化したデジタルアートの複製物を貸し出そうとする場合、貸与権が問題になります(著作権法26条の3)。デジタルアートには所有権が観念できないことから、貸し出しの申し出をするために複製をしたり公衆送信(インターネットにアップ)をしたりすることは、著作権法の条文を素直に読めば著作権者の許諾が必要ということになります(著作権者47条の2)。NFT化したデジタルアート(ないしはその複製物)を著作権者に無断で広くレンタルをしようとしても、著作権侵害となってしまいます。

最後に、そのNFT化したデジタルアートを売却するという場面を想定してみたいと思います。これは、譲渡の申し出をしようという段階では、譲渡の申し出をするために複製をしたり公衆送信(インターネットにアップ)をしたりすることであっても、前述のレンタルの場合と同様、著作権法の条文を素直に読めば著作権者の許諾が必要ということになります(著作権者47条の2)。

繰り返しお伝えをしておりますように、デジタルアートには所有権が観念できませんし、ご自身がデジタルアートを生み出したわけでもなければ、その創作者ないし販売者との間でお互いに認め合った当該デジタルアートへの独占的なアクセス権限を保有しているに過ぎないということになります。

これはつまり、創作者ないし販売者との間で成立したに過ぎない債権的な権限を第三者に売却をしたときに、その第三者がその権限を法的に承継できるのか(創作者ないし販売者に対してその地位を主張できるのか)という問題が残るということになります。

まとめ:何を取引しようとしているのか明確にしよう

このように、NFT化したデジタルアートを購入・利用・売却しようという場合、それぞれの場面で、ご自身が一体何を対象として取引をしようとしているのかが不明確になります。

著作権を取得する意向であれば、その旨を明確にして著作権の譲渡を受ける必要があります。

著作権の譲渡を受けた場合であっても、さらに他の者に二重に譲渡されてしまわないよう、文化庁に著作権の譲渡の登録を受けておくというの大切なことではないでしょうか。

文化庁で著作権の譲渡の登録を受ければ、そのデジタルアートの著作権が他人に二重譲渡されたとしてもその譲受人に対して自らが著作権を有することを主張することができるようになります(著作権法77条)。

以上、今回はデジタルアートという切り口でNFT・著作権について解説してまいりました。

NFT・デジタルアートにご興味を持たれている方は、法的な取り扱いにも注意をしながら、著作権者と著作権に関する取り決めも行いつつ、必要に応じて手続きも行っておくことが紛争の予防・回避のためには重要と言えます。

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