ダイ(DAI)はステーブルコインの一種です。ステーブルコインは、仮想通貨の価格変動による損失を回避するために投資家が利用するものです。安全性の高い通貨として、人気のあるステーブルコインの1つにダイがあります。
ダイ(DAI)とは?
前述したようにダイ(DAI)はステーブルコインの一種です。これからステーブルコインとは何かということに始まり、ダイの仕組みなどを中心にダイについてご紹介します。メーカー(MKR)という暗号資産とも深い関りがあるので、そこにも触れていきます。
ステーブルコインとは?
ステーブルコインとは、価格変動を最小限にするための仮想通貨の一種です。例えば、米ドルや金などの暴落リスクが小さい信頼性の高い外部資産に連動されています。
仮想通貨(暗号資産)の価格変動は、ある意味では武器であり、だからこそ短期間で大きな利益を出せるのですが、資産を仮想通貨に移しておきたいというような方がいる場合には必ずしも歓迎されるものではありません。例えば、自国の通貨が信頼を置けず、適切な投資先がなく困っているというような人がいると、このような価格が安定した仮想通貨というのは非常に助かるわけです。
また、価格が安定しているため仮想通貨取引所でドルなどの通貨の代わりとしての役割も担っています。海外の多くの取引所では、USDTというドルに連動したステーブルコインを中心に取引されます。仮想通貨を買うために現金をUSDTに換金してから、ステーブルコインで決済をするというイメージです。このように現実世界の通貨のような役割も一部では担っています。
また、ミャンマーでクーデターがありましたが、民主派のミャンマー亡命政府が前述のUSDTを公式通貨に指定したという有名な事例もあり、現実世界でも一部ステーブルコインが通貨の代替をなした事例は存在するのです。今後もそういった事例を目のあたりにする機会は出てくるでしょう。
仮想通貨は、なぜ価格変動が激しいかといえば、基本的性質として非中央集権的だからということがいえると思います。ドルなどの通貨がなぜ価格が安定しているかと言えば、政府という中央管理者が目を光らせて管理しているおかげで、金利の調整などで安定化させているのです。ステーブルコインはこういった中央管理者がいる通貨や資産などに価格を連動させることで、価格の安定を図っているのです。
ダイ(DAI)とは何か?
ダイは、ドルに連動しているステーブルコインとなります。原則として「1DAI=1ドル」になるように設定されています。日本円で見るとドル円相場の変動により価格が変動するので、為替リスクは存在しますが、為替はそこまで大きくは変動しないので、非常に価格安定性の高い仮想通貨だと言えるでしょう。
ダイは、イーサリアムブロックチェーン上で構築されたメーカープロトコルを通じて発行されます。なお、このメーカープロトコルのガバナンストークンがメイカー(MKR)であり、DAIとMKRはかなり密接に関連したトークンといえます。
ダイの発行方法
ダイの新規発行はメーカー(MKR)のプロトコル上に構築されたスマートコントラクトを通して行われます。ダイの発行を希望する人はメーカープロトコルで、イーサリアムを担保とすることでダイを発行することができます。
この担保とする通貨の範囲がイーサリアム以外にも広がっているようで、ベーシックアテンショントークンやUSDCなども認められているようです。また、いずれは不動産などの現実の資産を担保として預け入れてダイを発行することができるようになる仕組みが整うこともあり得るようです。
※2022年8月12日に、MakerDAOの共同創設者Rune Christensen氏がDAIの担保資産からUSDCを外す可能性があることに言及しています。USDCが中央集権的ステーブルコインという考えに基づいたもので、DAIの今後の安全性を更に高めるために検討しているのでしょう。
なお、担保として預け入れた仮想通貨を引き出すためには、ダイの返済に加えて所定の手数料を支払う必要があるようです。
ダイはどこで買えるのか?
ダイの入手方法は、基本的にはメーカープロトコルでの生成となりますが、一般的な取引所でも扱いがあります。日本の取引所ではGMOコインのみで取扱いがあります(メイカーの取扱いはGMOコインとビットバンク)。海外取引所では、最大手のバイナンスはじめとした複数の海外取引所で購入することが可能です。取引所以外では、ユニスワップのようDeFiを通じても、ダイを入手することができます。
なお、ダイはステーブルコインなので値上がり益などを狙うための仮想通貨ではありませんが、メイカーは日本の取引所であるビットバンク等で購入することが可能です。メイカーも将来有望な仮想通貨ですので、ダイの将来性に期待する方は、メイカーへの投資を検討してみるのもありかと思います。
本日のダイ(DAI)の時価総額や価格、市場占有率【2023年2月28日時点】ダイの最新の時価総額や価格、市場流通量などの情報は以下となります。
仮想通貨(暗号資産)名称 | Dai |
---|---|
単位(ティッカーシンボル) | DAI |
価格(2023年2月28日時点 以下項目も同じ) | 121.71378584円(0.999589ドル) |
時価総額 | 636,338,601,240円 |
時価総額占有率(仮想通貨の総時価総額に占めるDAIの割合) | 0.4912% |
時価総額ランキング | 17位 |
市場流通量(循環している供給量) | 5,228,155,520DAI |
DAIのHP | オフィシャルHP |
DAIの公式Twitter |
ダイ(DAI)の歴史
ダイの歴史を語る上では、メイカー(MKR)の歴史を語ることは欠かせません。
メイカーは、デンマークの実業家ルーン・クリステンセン氏によって2014年に設立されました。
ダイ自身は、2017年12月18日にイーサリアムのブロックチェーン上でローンチされました。
2018年9月には、米国のベンチャーキャピタル「アンドリーセン・ホロウィッツ(通称a16z)」は、メーカーダオに1,500万ドルを投資しました。これはメイカーの総保有量の概ね1割に迫る量だということです。同年、世界各国の仮想通貨への規制や日本におけるNEM流出事件などを発端として、仮想通貨バブルの世界的な崩壊が起き、ダイの担保となるイーサリアムも大幅に値下がりしましたが、そのタイミングでもダイは1ドルの価値を維持することに成功しました(後述の強制決済がなされた歴史は現在のところございません)。
2019年には担保とできる資産の範囲を大きく広げる取り組みがなされましたが。まずはイーサリアム以外の仮想通貨を担保とすることができるようになりました。次に不動産など仮想通貨以外の現実資産を担保とする取り組みにも挑戦しました。経緯としてはメイカー設立者のルーン・クリステンセン氏が、現実の不動産など仮想通貨以外の資産をダイの担保にできるように働きかけたところ、賛否両論の末、CTO(最高技術責任者)が辞任することになりました。なお、2022年12月時点でも、まだ現実資産を担保としたダイの発行の実績は確認できませんでした。これが実現すればDefiの実用化にとって、大きな前進ですので、今後に期待したいところですね。
紆余曲折を経て2021年には、ダイの時価総額が10億ドル(日本円で一兆円超)に到達し、同年にはメイカー財団が解散しました。解散というと心配に思う人もいるかもしれませんが、これは前向きな解散です。中央集権的な組織をなくすことで、非中央集権の実現を果たすことができました。これにより、特定の誰かに極端に利益が集まる不均衡が解消されることが期待されています。むしろこれは、ダイの個性をより色濃くするためには重要だと考えられます。
ダイ(DAI)の将来性
既に説明したように、ダイ(DAI)は順調にステップアップしている仮想通貨です。このままプロジェクトが進むのであれば、ダイの将来性は高いと言えるでしょう。
仮想通貨としての更なる普及を実現するには、その知名度も上げる必要もありますし、そのためには、より多くの暗号資産取引所への上場も必要となるでしょう。取引所が増加すると投資家がDAIを購入しやすい環境が増えることとなるので、プロジェクトの将来性にとってポジティブな影響をもたらすこととなります。
大きくインフレが起きた国の国民が、リスクヘッジのための価値の保存手段として仮想通貨DAIを大量に購入したこともあるので、多くの国の取引所に上場することで仮想通貨DAIの役割も大きくなるでしょう。ダイは価格が暴騰することもないが、暴落することもなくドル棟に連動するというのは大きなメリットなのです。
そのように開発が順調に進んでいるダイですが、実際にどの程度実用化されているかなどは次の「ダイの特徴は?詳しく解説」で記載しています。
ダイ(DAI)の特徴は?詳しく解説
ダイがステーブルコインとしてどのような位置づけにあるのか、どのように利用されているのかを中心にご紹介します。非常に心強いステーブルコインであることがお分かりいただけるかと思います。
ほかのステーブルコインとの違い
他にもUSDT、USDC、TUSDなどのステーブルコインがあります。これらのステーブルコインはダイと同様に米ドルにペッグされています。ダイは、次の3点で他のステーブルコインと異なります。
非中央集権的であること
1点目は非中央集権的であることです。先ほど例に挙げたUSDTやUSDCには確固たる中央管理者が存在し、集めたドルを資産運用してそれをもって根拠となる資産としています。ダイは、メイカープロトコルを通して管理されています。メイカープロトコルはイーサリアムブロックチェーン上にあるため、誰でもダイを生成することが可能です。
透明性が高く、不正が起こりにくい
2点目は透明性が高い点です。ダイのすべての活動は、イーサリアムを搭載したスマートコントラクトによって記録され、公開されます。そのため、ダイは透明性が高いといえます。これにより、中央集権的なステーブルコインとは異なり、管理者が不正に利益を得る心配がありません。
実際に中央集権タイプのステーブルコインであるUSDTは、集めたドルをヘッジファンドで扱うようなリスクの高い資産で運用しており、すべてのUSDTが引き出されたとしても、すべてをドルに還元することができないのではないかと懸念されています。これは米国で問題視されて、USDTがきっかけでどこかのタイミングで仮想通貨の大暴落が起きるのではといわれている程です。
ダイであればこのような心配はあり得ません。
意思決定が平等
ダイには民主的なガバナンス機構があり、変更の意思決定は、すべてダイ参加者の投票により行われますので勝手に不利な変更をされる心配がありません。
中央集権的なステーブルコインにおいては,管理者に権利が集中するので、独裁的にいつの間にか不利な扱いを受けるリスクが伴うのですが、ダイはそうではないのです。急激な変更のリスクが少ないと言えるでしょう。
ダイのしくみ
ダイは以下のような形でドルとの連動を実現しています。
超過担保
ダイはイーサリアムを担保としてメイカープロトコルdで生成されますが、安全性を高めるために1.5~2倍程度超過して担保を預ける仕組みになっています。そうすることで値動きの激しい仮想通貨を担保としていてもダイの価格を下回ることを極力防ぐことができます。
メイカーの追加生成
担保となる仮想通貨の価格が大幅に下落した場合は、メイカープロトコルが、ガバナンストークンであるメイカーを追加で生成することで、価格の安定性を保つ仕組みがとられています。ただし、その場合はメイカートークン(MKR)の価格は下落するという特質を持っています。
強制決済
担保となる仮想通貨が過剰に下落してしまった場合、担保としての価値がなくなってしまいますので、強制的にダイが決済され、担保として預けた仮想通貨に戻ります。強制決済などというと不穏ではありますが、2022年12月現在時点までで、強制決済されたことは一度もありませんので安全性は高いと言えます。2018年の仮想通貨バブルの崩壊を耐えきった実績もあるので、ある程度安心できます。
どのように利用されるか?
一般的に通貨には、価値貯蔵手段、交換手段、価値尺度、金融機能という4点がありますが、ダイはメイカーエコシステム上で、現実世界における通貨のように利用されています。
価値貯蔵手段
ダイはメタマスクなど複数の有望なウォレットでも保有することができます。前述のとおりダイは1ドルの価格を維持できるため、価格変動へのヘッジとして使用されることが想定されています。実際にバイナンスなど大手取引所でも取り扱っており、非中央集権的なダイを魅力に感じて、ダイで一時的に価格変動のヘッジをしている人がいます。
将来的には自国の通貨が弱い発展途上国の方々が自らの資産を守る手段としてダイを保有するなどということもあり得るのかもしれません。
2022年12月時点では、アメリカを中心とする世界的なインフレーションの影響で途上国債権のデフォルトが懸念されていますが、そのような国の人々が安心して自らの資産を守る手段を欲していることは想像に難くありません。
交換手段
ダイの発行元であるメイカープロトコルのエコシステムには、Uniswapなどの有望なDefiがあります。ダイはこれら有望なDefi上で非中央集権的なステーブルコインのとして人気です。Defi上でダイを決済用として保有して他の仮想通貨と交換することができます。
価値尺度
価値尺度とは、商品やサービスの価格設定に使用される価値の尺度です。大手NFTマーケットプレイス「オープンシー」など分散型アプリケーションサービスの価格設定の一部にダイが使われているようです。
金融機能
そして海外ではダイのレンディングも人気のようです。米国の大手取引所「Coinbase」では年率2%で利息を得ることができるそうです。
そして、ダイは将来的に海外送金にも利用できるかもしれません。ブロックチェーン技術に基づいたメイカープロトコルを使えば、数秒のうちにダイを送金することができます。現在の国際送金は銀行間で行うため膨大な手数料と時間を要してしまいますが、ステーブルコインのダイであれば、ドルを送金するのと同じ効果を安い手数料と短い時間で実現することが可能になります。
ダイ(DAI)のまとめ
ダイの仕組みやほかのステーブルコインとの比較、利用用途などを紹介しました。将来有望な期待のできるステーブルコインということがお分かりいただけたのではないでしょうか?
非中央集権的な独自のエコシステムを持つダイは、イーサリアムなど仮想通貨を担保として、メイカープロトコル上で生成されるステーブルコインです。いずれは不動産など現実の資産を担保として発行することが想定されており、現時点でもDefi上で価値の交換手段や価値尺度として通貨のような機能を果たしている実需に基づいた仮想通貨だといえます。
ダイはステーブルコインですので値上がりで利益を狙うということありませんが、普及が進めばメイカープロトコルのガバナンストークンであるメイカーの価格に反映されます。今後ダイの可能性に期待をされる方は、メイカーに投資をしても面白いかもしれません。
ただし、投資は自己責任です。どのようなプロジェクトでも、とん挫する可能性はゼロではありません。
また、可能性は低く極端な例ですが、今後の世界情勢でドルの価値が暴落してしまったら、そもそもステーブルコインとして機能しなくなることもあり得ます。今後のことは誰にもわかりません。万一ゼロになっても困ることがない余裕資金で投資することを徹底しましょう。