ビットコインが法定通貨になるメリットとデメリットを、エルサルバドルと中央アフリカを例に解説

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ビットコイン(BTC)を法定通貨にした国は複数あり、エルサルバドル共和国が2021年に最初に法定通貨にし、その後に2022年に中央アフリカ共和国も法定通貨としました。

法定通貨になるということは、仮想通貨(暗号資産)を法定通貨にするということで、大きなニュースとなりました。

ビットコインなどの仮想通貨(暗号資産)を法定通貨とするメリットやデメリットについて、又、エルサルバドルや中央アフリカで法定通貨となった理由やその後の影響について解説します。今後ビットコインが法定通貨化される可能性があるトンガの例にも触れたいと思います。

なお、パラグアイやアルゼンチンでもビットコインが法定通貨になるのではないかと考える人もいますが、現在は両国は仮想通貨に対して慎重な姿勢を示しています。

又、日本アメリカなどの先進国でビットコイン(BTC)をはじめとする仮想通貨(暗号資産)が法定通貨として認められる可能性があるのかどうかなどに関しても考察していきたいと思います。

みお

メリットが存在するとはいえ、ビットコインを国の法定通貨にするなんて、思い切った政策を取る国があるんですね。

タクミ

保守的な政策が多い日本では中々考えられないけれど、途上国ならではのリスクもとった積極的な政策ですね。

目次

ビットコイン(BTC)を法定通貨とするメリットとデメリット

ビットコイン(BTC)のような仮想通貨を法定通貨とするメリットは、主に次のようなところにあると考えられます。

  • 海外送金のコストが下がることで、活発に送金が行われることになる。特に自国への送金が多い国としては、国内に送金されてくる資金が増えることが期待できる。
  • 銀行口座を持っていない人が多い国でも、スマートフォンの普及率は高いことが多いので、仮想通貨(暗号資産)のウォレットを作ることで、そういった人々が金融サービスを受けることができる
  • 経済のデジタル化が進展することで、国外企業からの投資が活性化する可能性がある。

もちろん、法定通貨とするデメリットもあり、次のような点は懸念されます。

  • ビットコインなどの仮想通貨の価格変動は大きいため、暴落時には、ビットコインを保有している個人や国が大きな損失を被る可能性がある。
  • 価格変動が激しいので、税金をビットコインで支払われた場合に、国の財政状況が不安定になる可能性がある(法定通貨とするということは、税金の支払も認めていかなければならないでしょう)。
  • マネーロンダリングが行われやすい環境になってしまう可能性がある。

エルサルバドルでのビットコイン(BTC)の法定通貨化

エルサルバドル共和国の国旗

エルサルバドルはビットコイン(BTC)を世界で初めて法定通貨とした国です。

2021年6月にマイアミで行われた「ビットコイン2021」への動画によるメッセージで、同国のブケレ大統領が法定通貨とすることを発表し、その4日後にはビットコイン法が議会で可決され、9月に同法が施行されました。

仮想通貨(暗号資産)に対して規制を行う国もありますし、ビットコインのボラティリティ(価格変動幅)は大きいので、エルサルバドルが法定通貨化したことは、大きなニュースとして世界に伝えられました。かなり思い切った政策だと言うことができるでしょう。

なぜエルサルバドルはビットコイン(BTC)を法定通貨としたのか?その理由について

エルサルバドルのビットコインの法定通貨化を推進したナジブ・ブケレ大統領
ナジブ・ブケレ大統領

ここでは、エルサルバドル政府がなぜビットコイン(BTC)を法定通貨としたのか、その理由ついて説明します。

エルサルバドルは元々コロンと呼ばれる自国の通貨がありましたが、コロンは価格が不安定でした。そのため、2001年に米ドルを流通させることにし、米ドルが同国の法定通貨となりました。

アメリカにいるエルサルバドルからの移民が米ドルを送金してくれるのですが、これがエルサルバドルの20%超となっている状況でした。朝日新聞GLOBE編集部員の村山祐介氏によると、2016年の時点ではエルサルバドルの1世帯当たりが送金受領する金額は、月収の50%以上ということで、かなり国外からの送金に頼っている国であることがわかります。

そこで、送金手数料を下げることなどを理由として、ブケレ大統領をはじめとするエルサルバドルの政治家がビットコインの法定通貨化を目指したと言えます

又、中南米にはまだまだ貧困世帯も多く、エルサルバドルでは銀行口座を持っていない人も70%程度いると考えられるので、スマートフォンで送金等が可能なビットコインを資金決済等に持ち込むことで、金融サービスを利用できる人を増やそうというのもビットコインの法定通貨化の理由です。

その他、ビットコインに対して肯定的な国とみなされるので、ビットコインのマイニングをする人が同国のサービスを利用する機会が増加するであろうことなど、様々な側面を考慮して法定通貨化されたと考えられます。

みお

発展途上国だからこそ、ビットコインを法定通貨とすることで享受できるメリットがあるんですね。

ビットコイン(BTC)が法定通貨となった後のエルサルバドル経済への影響

ビットコインをエルサルバドルがいくら購入しているかは不明ですが、価格変動が大きいビットコインですから、暴落すると同国の損失も大きくなり、当然それは経済的損失となります

エビットコイン購入量は調整していると考えられますが、もしも10分の1になるようなことがあれば、損失額は大きくなるでしょう。

ただし、エルサルバドル政府もそれを考慮して、必要最低限の購入に留めているのではないかと思いますし、今後のビットコインの世界的普及率や価格安定性の動向などを踏まえて、ビットコインの保有量を増やすのではないかと考えられます。

なお、フィッチレーティングス(Fitch Ratings)は、2022年2月にエルサルバドルの格付けをB-からCCCに引き下げましたが、その理由としてビットコインの法定通貨化を挙げています。

ビットコインの下落局面では、エルサルバドルは財政逼迫しているのではないかとニュースになることもありましたが、エルサルバドルの財務副大臣は、ビットコインの価格下落による国家財政への影響は軽微であるとしています。

ただし、下記の記事にあるように、ビットコインの将来性や価格の動向に関しては、政府もかなり注視しているものと思われます。

中央アフリカ共和国でのビットコイン(BTC)の法定通貨化

中央アフリカ共和国の国旗

中央アフリカ共和国は、世界で二番目にビットコインを法定通貨とした国です。

2022年4月27日に法案が可決されたと公表されました。

フォースタン・アーシャンジュ・トゥアデラ大統領が述べているように仮想通貨ハブを目指しており、ビットコインサイドチェーンSango(サンゴ)の構築を進めていく予定です。

サイドチェーンはビットコインのメインチェーンの欠点を補完する機能を持ち、スケーラビリティ問題による送金詰まりなどを克服することができます。

中央アフリカ共和国がビットコイン(BTC)を法定通貨とした理由

ビットコインの法定通貨化を達成した中央アフリカのフォースタン=アルシャンジュ・トゥアデラ大統領
フォースタン=アルシャンジュ・トゥアデラ大統領

中央アフリカ共和国がビットコインを法定通貨とした理由に関して説明いたします。

中央アフリカ共和国は第二次世界大戦以前においてはフランス領でしたが、1958年に独立しました。

この時に生まれたCFAフランが法定通貨なのですが、CFAフランの信用はユーロによって担保されており、中央銀行の外貨準備高の実に50%をフランスに預けなければならないという状況になっていました。

このことへの反発も理由となり、CFAフラン体制から出て、ビットコインを活用していこうと考えたようです。

その他、フィンテックの発達を目指すことも理由の1つでしょう。

又、エルサルバドル同様に、外国からの中央アフリカ共和国への送金手数料を下げて、外国に出稼ぎに出ている労働者からの送金量を増やしたいという理由もあるでしょう

銀行口座を持たない国民達が現金を持ち歩くことは危険でもあるので、そういった点でもビットコインを採用するメリットもあります。

タクミ

CFAフラン体制は、新たな植民地システムであるという批判も多かったので、ビットコイン法定通貨化の法案をトゥアデラ大統領も支持しましたし、議会の全会一致で可決されました。

ビットコイン(BTC)が法定通貨となった後の影響中央アフリカ共和国の経済への影響

中央アフリカ共和国は、ビットコインの法定通貨化に伴い、かなり多くの提案が出ており、経済への影響も大きくなるでしょう。挑戦的な内容も多いので、社会実験のようなことになってくるでしょう。

政府がビットコイン決済によって同国の土地を投資家に販売したり、デジタル国立銀行の設立案が出てきたリ、仮想通貨決済に対しては非課税とする案などが出てきています。

これらの案が実行されると、経済的インパクトは大きくなってくるでしょう。

同国は仮想通貨アイランドを目指すわけですが、最貧国の1つでもあるため電力供給の安定化など、まだまだ課題は大きいので、そういった部分が構想に影響を与えないかという不安はあります。

トンガ王国のビットコイン(BTC)の法定通貨論

トンガ王国では、既にビットコインの法定通貨論があります。

法定通貨としてパアンガ(トンガドル)が存在しますが、ここにビットコインが追加される可能性が高まっています。

2022年秋に法案が議会に提出されて可決され、その後に国王の同意と法案署名がなされてから施行され、ビットコインが法定通貨になることになります。もちろん、現段階では確定的なことは分からないのですが、無事に法案が可決されると、数ヶ月から半年程度で法定通貨となるのではないでしょうか。

世界で3番目にビットコインを法定通貨化する国となる可能性は大いにあるでしょう。

なお、トンガのビットコイン法定通貨化の法案は、エルサルバドルのものを参考に作られていて、ほとんど変わらないようです。

日本やアメリカ等の先進国でビットコイン(BTC)が法定通貨になる可能性

みお

日本、アメリカ、ヨーロッパなどの先進国では、ビットコインを法定通貨にするというイメージは湧きませんよね。

タクミ

仮想通貨支持者としては残念かもしれませんが、今のところ、ビットコインを法定通貨にするべきであると主張する政治家か先進国ではほとんどいないと言えます。

日本やアメリカなどの先進国においてビットコインなどの仮想通貨(暗号資産)が法定通貨となる可能性があるかというと、現在の状況からすると、その可能性は低いと言えるでしょう。もちろん、万一、アメリカがビットコインを法定通貨として採用するようなことがあると、価格は暴騰するでしょうけれども、採用される確率はかなり低いでしょう。

外国への出稼ぎ労働者から自国への送金が多い場合や、銀行口座を持たない国民が多い国では、ビットコインを法定通貨にするメリットが大きいと考えられますが、先進国においては、そのようなメリットが働きにくいでしょう。又、マネーロンダリングの問題や、自国の金融機関の保護なども考えるとデメリットが大きく、仮想通貨を法定通貨にできないと思われます。

なお、アメリカのアリゾナ州では、Don Huffines氏が州知事選に立候補した際に、ビットコインを州内で法定通貨として認めるという政策を打ち出しました。しかしながら、アメリカ憲法では、そもそも州が独自に法定通貨を決定する権利を認めていませんので、あくまでもそういった政策発表があったという事実があるのみです。

日本政府は、エルサルバドルがビットコインを法定通貨にした際には、ビットコインを外国通貨として認めないとしています。ビットコインがエルサルバドルの法定通貨だとしても、エルサルバドルの法律では、ビットコインを決済通貨として受け入れることが困難な場合にはビットコインで決済を受け入れなくて良いという意図の文面があるため、「強制通用力がないビットコインは外国通貨でもない」と解釈したと考えられます。

日本でもビットコインの受け渡しを誰てもできるわけではないですし。強制通用力を持たせることは困難でしょうから、日本国内で法定通貨となるのは難しいと言えるのではないでしょうか。

もちろん、強制通用力以前の問題として、円との併用は認めたくないでしょう。

法定通貨として強制通用力を持たせるということは、税金の支払にもビットコインが使用されることになるでしょうから、国としても価格変動リスクを負うことになってしまいますので、避けたいでしょう。

まとめ

このページでは、ビットコインの法定通貨化に関して、エルサルバドル共和国や中央アフリカ共和国を例として説明しました。

途上国では法定通貨によるメリットがあるのですが、ビットコインのボラティリティ(価格変動幅)の大きさゆえに、法定通貨にすることを危険視する声もあります。

又、日本やアメリカなどの先進国においては、ビットコイン等の仮想通貨を法定通貨とするには、かなり高い壁があるように思います。

途上国で、ビットコインが法定通貨にされるのではないかと噂があるパラグアイやアルゼンチンですが、パラグアイについては暗号資産規制法案が承認されたのであって法定通貨とはなっていませんし、アルゼンチンのアルベルト・フェルナンデス大統領も仮想通貨はまだ初期段階にあると慎重な姿勢をとっています。アルゼンチン中央銀行総裁のミゲル・アンヘル・ペッシェ氏は、仮想通貨は経済安定への脅威と述べて、規制強化を訴えているほどです。

まだまだ仮想通貨を法定通貨にする国は少ないわけですが、ビットコインなどの仮想通貨が法定通貨になるかどうかに関わらずに、仮想通貨の普及と共に、仮想通貨による送金や決算の場面は増えていくのではないでしょうか。

その送金の手軽さや手数料の安さには大きなメリットがあるので、今後利用できる機会が増えていくことを期待しています。法定通貨ではなくとも、より通貨又は通貨に非常に似た性質のものとして、その価値を高めていくでしょう。

今後は、仮想通貨(暗号資産)の保有率の高い国においては、ビットコインの法定通貨論が国民や政治家から出されることはあるでしょうし、より多くの国が法定通貨とする可能性があるでしょう。

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