仮想通貨(暗号資産)は税金の確定申告が必要

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この記事では、税理士が仮想通貨(暗号資産)の税金の確定申告損益の集計方法について解説していきます。確定申告が必要なケースと不要なケースも詳しく説明いたします。又、利益に応じた税金のシミュレーションも行っているのでご参考としてください。

仮想通貨で利益が出ているにも関わらず、確定申告せずに無申告とするのは危険なので、必ず申告しましょう。

この記事では、税理士が仮想通貨の損益計算や、仮想通貨と税金の確定申告の関係性に関して、しっかりと解説します。

目次

仮想通貨で利益が出たら確定申告が必要

確定申告書第一表の画像
この確定申告書の収入金額等の内、「雑」の「その他」に仮想通貨(暗号資産)の売買は該当します。

個人が仮想通貨(暗号資産)の売買などで利益が出た場合には税金の確定申告が必要となります。NFTの売買などの利益も同じでやはり確定申告が必要です。

1月1日から12月31日までに出た利益を、翌年2月16日から3月15日まで税務署に申告します。納税も3月15日までに行わなくてはなりません。ただし、振替納税という制度を利用して、銀行引き落としにする場合には、4月の引き落としとなります。振替納税を利用することで納税のタイミングを1ヶ月遅らせることができるのです。

確定申告の際は、仮想通貨の売買等による利益は雑所得に該当します。事業所得で申告して青色申告による節税策を使ってしまうと、後から税務調査で否認される危険があります。

もしも、年間を通じて損益を計算したら損失が生じていた場合は確定申告しなくても良いことになりますが、他に仮想通貨以外の雑所得がある場合には、その雑所得の利益と相殺(通算)することが可能ですので、仮想通貨取引による損失も確定申告した方が節税になります。

なお、仮想通貨の利益の集計は非常に複雑で難しいためクリプタクト(Cryptact)などの損益計算ソフトを利用するのが現実的だと言えるでしょう。利用している取引所が国内で1か所である場合には円と米ドルの間の為替の影響もありませんし、年間取引報告書も1か所だけから発行されるため、自分で計算できるかもしれません。 こちらのページでは、仮想通貨の損益の集計、仮想通貨にかかる税金の種類いくらくらいの税金が出るのかを詳しく説明します。

確定申告をしないと税務署にばれる?ばれない?

「税務署に確定申告しなくてもばれないだろう」と考えて申告をしないなど、脱税となる行為は避けましょう。 税務署は仮想通貨取引所から情報を吸い上げて、確定申告をしていない無申告の人を見つけることでしょうし、そうなれば重加算税という大きな罰金を払うことになってしまうかもしれません。確定申告をしなければ、税務署に仮想通貨・暗号資産の無申告がばれるのは時間の問題であるとお考えください。

又、納税が遅れた期間に応じて延滞税という利息を取られてしまいます。せっかくトレードして稼いだお金の内、本来支払うべきだった税金と、追加で発生する罰金と利息でほとんど持ってかれていくようなことになっては辛いですよね。

利益が20万円以下の場合、申告は不要

会社員として本業を持っていて、副収入として仮想通貨の利益を得ている場合、その利益が20万円以下の場合には、税務署へ所得税の確定申告をする必要はありません。

ただし、注意点があります。20万円以下だから税務署への申告が不要であるという条文は所得税法にのみ存在し、地方税法には存在しません。したがって、税務署へ確定申告をしない場合は、住民税の申告をする必要があります

本来は確定申告の情報を税務署が市区町村の役所の住民税課に送信して住民税が計算されるのですが、20万円以下で確定申告を税務署にしなかった納税者に関しては、市役所や区役所は情報を得られなくなってしまうため、別途、住民税の申告を求めてくるのです。 なお、本業と仮想通貨から発生した利益以外に、別の所得もある場合には、その仮想通貨の利益とその別の所得の合計額で20万円以下か20万円超かの判定を行ってください。

仮想通貨の損益の集計方法

仮想通貨の損益の計算方法について解説します。誤って計算して過大な税金を納めたり、過少な税金を納めないように気を付けましょう。 日本国内の取引所で行われた取引だけでなく、海外の取引所等で行われた取引から発生した損益も認識することにご注意ください。

よく日本円に変えた場合のみ税金がかかると勘違いされている方がいますが、日本円にしたかどうか、銀行に入金しなくても課税されることにご注意ください。日本円にしなければ税金はかからないまま取引をできるということはないのです

損益を認識するタイミング

仮想通貨の損益を認識するタイミングは以下の通りです。

・仮想通貨を売却した時

仮想通貨を10万円で取得し、それを後日15万円で売却した場合は、差額の5万円の利益を認識します。

・仮想通貨を他の仮想通貨と交換した時

1BTCを購入し、その1BTCを10ETHを交換した場合、その交換時の時価でBTCを売却したものとして、取得時の価額との差額で損益を認識します。

・仮想通貨でNFTなどを購入した時

仮想通貨でNFTを購入した場合、そのNFT購入時の時価で損益を認識します。

・仮想通貨で物品やサービスの決済をした時

物品やサービスを決済した金額で売却したものとして損益を認識します。

・マイニング等で市場価格のある仮想通貨を獲得した時

マイニングやゲームプレイなどで市場価格のある仮想通貨を取得した場合には、その取得したタイミングの時価で利益認識します。ただし、市場価格がない仮想通貨を得た場合には、利益を認識する必要はありません。

・ステーキングで報酬を受け取った時

ブロックチェーンネットワークを支援することでステーキング報酬を得られますが、こちらに関しては、報酬を得た時の市場価格によって、利益を認識することになります。

・エアドロップで市場価格のある仮想通貨を取得した時

エアドロップに関してても、市場価格が付いてない時点でもらった場合には利益を認識しませんが、もらった時点で市場価格がある場合は、その金額で利益を認識します。

総平均法

売却や決済した際に仮想通貨の損益を認識するのですが、そのためには売却額だけではなく取得価額を知る必要があります。仮想通貨の損益は次の算式で認識するためです。

売却価額-取得価額=損益

取得価額の計算方法としては、法定評価方法としては総平均法を用いることとされています。総平均法では、その年に購入したそのコインの平均取得単価を取得価額とする方法です。過去の年に購入したコインが年またぎして残っている場合は、それらのコインは前年末の取得価額を引き継いでいるものとして計算します。

取引日付数量取引内容金額
2021/1/10 1 100,000円
2021/12/5 1 200,000円
2021/12/5 1 250,000円

取得価額の計算は以下のようになります。

(100,000円+200,000円)÷2=150,000円

売却時利益は以下のようになります。

250,000円-150,000円=100,000円

1個残っているコインは年またぎすることになりますが、このコインは150,000円を取得価額として引き継ぎ、2022年中に購入したコインの取得価額と合わせたところで、2022年の総平均法における1コインあたりの取得価額を計算します。

総平均法のメリットは、その計算方法が移動平均法と比較して簡単なところにあります。 なお、総平均法と移動平均法のどちらが税金が安くなるかという点に関しては、こちらはケースバイケースでして、一概に言えるものではありません。

移動平均法

移動平均法は、コインを購入する都度、取得価額を決定する方法です。総平均法のように1年間という期間を設けて、その中の平均取得額を利用する方法ではないのです。

例えば、以下の例を見てください。もしも2021年から2022年にかけて次のような売買を行った場合はどのように計算するのでしょうか。

取引日付数量取引内容金額
2021/10/311100,000円
2022/12/51150,000円
2022/12/101160,000円
2022/12/151250,000円

2022/12/5に取得した時の取得価額は、前年2021年に購入した金額との平均値となるので、以下の算式により125,000円となります。

(100,000円+150,000円)÷2=125,000円

2022/12/10で160,000円で売った時の利益は以下の通りです。

160,000円-125,000円=35,000円

続いて、2022/12/15に購入した時の取得価額は残っているコイン1つと新規取得コインの平均額となります。

(125,000円+250,000円)÷2=187,500円

このように、1年間の中でも、そのタイミングによって取得価額が変わってくるのが移動平均法です。少し複雑ですよね。

なお、移動平均法を使う場合には、所得税法施行令第119条の3の規定により、「所得税の暗号資産の評価方法の届出書」を、その暗号資産(仮想通貨)を取得した日の属する年分の確定申告期限までに提出しなくてはなりません。

個人は含み益には課税されない

個人の場合には、期末(年末)に保有している仮想通貨を時価評価して、含み益に対して課税されることはありません。あくまでも、売買等のタイミングで損益を認識するのです。

又、反対に含み損が出ていても、その含み損部分を損失として確定申告をすることも認められていません。 法人で保有している場合は時価評価して含み益にも税金がかかるのですが、個人の場合はそのようにことにはならないので注意してください。

NTFを売却(譲渡)した場合の税務

NFT(非代替性トークン)やFT(代替性トークン)で、財産的価値を有する仮想通貨(暗号資産)と交換可能なものを売却した場合の税務に関しては、国税庁のページでも公開されていますが、ここでわかりやすく説明しておきます。

まず、NFTやFTを保有している間に価格が上がった場合のその値上がり益(キャピタルゲイン)に関しては、譲渡所得に該当します。ここが雑所得にならないことに注意が必要です。売却額(譲渡価額)と購入額(取得費)の差額を所得として計上する必要があります。

ただし、もしもデジタルアートをはじめとするNFTやFTを作成して売却しているような場合で、それを営利目的で継続して行っているのであれば、雑所得又は事業所得と振り分けられます。クリエイターさんは、こちらに該当すると言えるでしょう。

個人のNFTやFTの売買の確定申告について、より詳しくは下記のページをご確認ください。

仮想通貨にかかる税金の種類

個人が確定申告をした後に仮想通貨にかかる税金は3種類です。所得税復興特別所得税、もう一つは住民税(都道府県民税や市区町村民税)です。 仮想通貨の利益は雑所得となり、かつ、消費税の課税取引には該当しないため、事業税や消費税はかかりません。又、所得税の予定納税の対象ともなりません。

所得税

所得税はその人の年間の合計所得(儲けの合計)から基礎控除や扶養控除などの所得控除を差し引いた金額に対して課税されます。その金額が大きければ大きいほど、税金が高くなるのです。

超過累進税率が採用されているため、年間の稼ぎが多ければ多いほど、所得税は高くなります。仮想通貨で億り人になったような場合には、4,000万円超の部分に対しては最高税率の45%が課税されるので、かなり重い税金だと言えるでしょう。 毎年の確定申告期限までに納付するか、振替納税を利用して4月に銀行引き落としの形で納税することになります。

復興特別所得税

復興特別所得税は、算出された所得税額に2.1%を乗じた税額となります。負担としてはそこまで大きいものではありません。

例えば、所得税額が1,000,000円の場合は、その2.1%の21,000円の復興特別所得税がかかります。 所得税と一緒に納税することになります。

住民税

住民税は一律10%ですので、計算は簡単です。

住民税は自ら納付書を作成して納付するものではなく、市役所や区役所が住民税額を計算して、納付を請求してきます(役所が税金を計算して課税するこのような課税方法を賦課課税と呼びます)。

会社員の方は、確定申告書の第二表において給与所得以外の住民税の納付方法を選択できます。 特別徴収と言って会社でもらうお給料から仮想通貨にかかる住民税も天引きしてもらう方法と、普通徴収と言って納付書を自宅に送ってもらって自ら金融機関で納付する方法があります。普通徴収にしたい場合は、第二表で「自分で納付」というところを選択した上で、確定申告書を税務署に提出してください。

仮想通貨にかかる税金の金額のシミュレーション

仮想通貨の利益にかかる税金はかなり大きくなることもあります。納税資金を確実に確保するためにも、税額のシミュレーションは行っておきましょう。

利益ごとの税金の概算シミュレーション

会社員で年収600万円の人が仮想通貨に投資して利益を得たものとして、以下でシミュレーションしてみたいと思います。なお、所得控除は150万円と仮定します。仮想通貨の利益が50万円100万円500万円1,000万円3,000万円1億円の場合を想定してシミュレーションします。なお、所得控除の金額は社会保険料控除と基礎控除に生命保険料控除がある場合を想定し、150万円と仮定します。

なお、下記のシミュレーション表の金額は、給与から発生する税金を含まず、あくまでも仮想通貨(暗号資産)から得た雑所得に対して確定申告によって発生する税額を示しています。

仮想通貨の利益(雑所得)の金額所得税及び復興特別所得税住民税合計
500,000円57,200円50,000円107,200円
1,000,000円159,300円100,000円259,300円
5,000,000円1,004,000円500,000円1,504,000円
10,000,000円2,572,200円1,000,000円3,572,200円
30,000,000円10,568,900円3,000,000円13,568,900円
100,000,000円42,390,400円10,000,000円52,390,400円

上記の仮想通貨の利益に対する税金のシミュレーションからもわかる通りで、利益が大きくなればなるほど、稼ぎに対してかかる税率も高まっていくのです。いくら稼いだらどのくらい税金が出るか、これを計算した上で取引は続けていきましょう。

仮想通貨の損失は他の所得との損益通算はできない

損益通算とは、特定の所得区分で損失が出た分だけ、他の所得と相殺して、他の所得にかかる税金を減額できる制度です。しかし、そもそも雑所得は所得税法上、損益通算が認められていません。したがって、仮想通貨は雑所得になるので、損失が出たとしても、給与所得、事業所得、不動産所得などの他の所得区分と損益通算ができません。

ただし、仮想通貨以外の総合課税の雑所得がある場合には、その雑所得と仮想通貨の損失は相殺できることに注意しましょう。この節税を忘れると、大きく損してしまうかもしれません。総合課税の雑所得でないとならないので、分離課税となるFX等の利益とは相殺できないことになります。
※総合課税となるFXも存在し、その利益と仮想通貨の損失は通算可能です。

損失は繰り越せない

仮想通貨の取引で損失が生じたとしても、残念ながらその損失を翌年に繰り越して、翌年以降の利益から控除して税金計算をすることは認められていません。この仮想通貨は赤字の繰越が認められていないという点は、税制上は非常に不利だと言えます。

赤字が出たら繰越ができるように、今後の税制改正に期待したいところです。

節税方法について

確定申告書の所得金額記載欄の画像

仮想通貨にかかる税金の節税方法としては、やはりできる限り多くの経費を合法的に計上して、利益を圧縮することでしょう。上記の確定申告書の画像の所得金額等の部分には、仮想通貨の取得費だけではなく、必要経費も差し引いた金額を記載することになります。仮想通貨にかかる必要経費としては、以下のような項目が考えられます。

・仮想通貨の取得費(取得価額)

・取引所へ支払う手数料

・取引所へ入金する時の振込手数料

・自宅で取引スペースを設けている場合の家賃

・自宅で取引する場合の電気代金

・Wi-Fiやプロバイダ代金

・スマホで取引する場合のスマホ代金

・10万円未満のPC代金及びPC関連機器代金

・仮想通貨投資情報を交換する知人たちとの交際費(飲食代、旅行代、お歳暮代、ご祝儀や香典など)

・勉強のためのセミナー代

・勉強のために書籍代

・10万円以上のPCなど、固定資産の減価償却費

プライベートにも仮想通貨取引にも関わる支出に関しては按分して、取引に関わる割合だけを必要経費に計上してください。皆さんがよく疑問に思うのは、家賃の計上割合です。3割程度なら税務署も認めてくれるという話をされる方もいますが、実際の使用面積分だけ必要経費にしましょう。

少し例を挙げてみます。
例)
仮想通貨専用スペースの面積 18㎡
自宅の全体面積 60㎡
家賃120,000円
120,000円×18㎡÷60㎡=36,000円
上記の36,000円を必要経費にして良いことになります。
これが一つの方法ですが、電気代に関しても、家賃と同じ割合で必要経費にすると良いでしょう。

他にも、共有部分を除いた自宅の面積の内に占める仮想通貨専用スペースの面積の割合を経費にするという考え方もあります。

年またぎして取引を続ける場合の税制上の注意点

仮想通貨にかかる税金は非常に大きくなることがあります。それだけに、納税前に資金を失ってしまうと、お金がないのに税金だけが残ってしまい、破産状態になってしまうリスクがあります。「仮想通貨の税金を理解してないのなら、仮想通貨取引を行ってはいけない」くらいの気持ちを持ってください。これは、仮想通貨以外のNFTなどの暗号資産についても同じことが言えます。特に年またぎで取引する場合は注意が必要です。

納税額を確保して残りのお金で取引すること

年またぎの取引で破産してしまうような一例をここで挙げます。

一年間で仮想通貨の売買等を繰り返し、例えば1,000万円の投資額に対して7,000万円の利益が出たとします。そして、3,500万円の税金が発生したとします。この時点では最初の1,000万円と7,000万を合計した8,000万円が残っています。一般的な会社員の方でしたら、かなりの金額を稼いだことになり、この時点ではとても幸せな気持ちかもしれませんね。

その後、年が明けた1月以降も売買を繰り返して、その8,000万円が2,000万円になってしまったとします。この場合でも、年末までに確定した3,500万円の税金の納税は免れません。 差額の1,500万円を支払えないと、税金で生活が破綻してしまうようなことになるでしょう。こうなると、天国から地獄ということになってしまいます。年末で確定した利益に対する納税資金は確保してから翌年の取引に臨むようにしましょう。

納税資金が足りないと滞納処分で差し押さえられる

税金を支払うことができない場合には、国税徴収法に則り、滞納処分が行われることになります。滞納処分とは、財産の差押や換価(財産を公売等してお金にすること)をすることです。

銀行預金が差し押さえられて消えてしまったり、債権差押と言って会社からもらうお給料を差し押さえられて会社が給料を支払わずに代わりに税務署に納付するような事態になってしまいます。この他、自宅や投資用物件などの保有している不動産が差し押さえられることも多くあります。

税金が支払えなくなるということは恐ろしいことなのです。仮想通貨は特に納税額が大きくなりやすいので、十分に注意してください。 仮想通貨の確定申告をしないでも税務署にばれないと思っていて、何年も経ってから過去の税金や罰金、利息も含めて一度に納税するようなことになった場合には、まずほとんどの人はすぐに支払えないので大変なことになります。確定申告をしないという選択はないと思ってください。

基本的にはクリプタクトのような定番の計算ソフトを使うのが良いかなと思います。

コインチェックやビットフライヤーなどの国内取引所の取引明細を読み込ませることで、集計を楽にしてくれるので、確定申告書作成の手間を大幅に削減してくれるでしょう。

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